2011年9月12日月曜日

文字起こし 「ETV特集 ネットワークでつくる放射能汚染地図3 子どもたちを被ばくから守るために」 (後半)

お待たせしました。

「ネットワークでつくる  放射能汚染地図3  子どもたちを被ばくから守るために」 後半です。

50キロ地点でも検出される、基準値を超える放射線量。
危険にさらされる赤ちゃんや子ども達。
東電や国の対応は、あまりに遅くて、待ってはいられない。
岡野さんと木村さんと共に、二本松市は独自の対策をおこなっています。





前半は、こちら

文字起こし 「ETV特集 ネットワークでつくる放射能汚染地図3 子どもたちを被ばくから守るために」 (前半)


(過去の文字起こし NHK ETV特集

文字起こし 「ETV特集 ネットワークでつくる放射能汚染地図 ~福島原発から2ヶ月~」 文字起こし 「ETV特集 続報 放射能汚染地図」
文字起こし 「ETV特集 ネットワークでつくる放射能汚染地図3 子どもたちを被ばくから守るために」 (前半)



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ETV特集 ネットワークでつくる放射能汚染地図3  子どもたちを被ばくから守るために」 (後半)



木村さんは、南杉田の住民が、どの程度、放射能の危険にさらされて暮らしているのか、さらに詳しく調べることにしました。

「2マイクロのところ、ずっと」

住民に汚染地図が公表されてから、不安が広がっていました。

住民「高いところにきている子どももいるから。郡山から家さきて、毎日いるから、心配なのね。」
木村さん「う~ん、うん。家の周りは、こうやって、落ちている奴ひらって、出してあげた方がいいですね。」
住民「もってきたわけなんです。」
木村さん「ふ~ん。」
スタッフ「ああ、そうなんですか。」
木村さん「極端じゃないけど、ちょっと高いですね。」

夏休みで、孫が家に来ているといいます。

住民「これから、杉の葉っぱだんから、よけいですよね。」
木村さん「そうですねよね。こういう、葉っぱなんかに付着しやすかったんですよ。」

木村さんは、放射能が付着しやすい木の枝葉は、住居から出来るだけ遠ざけたほうがいいと伝えました。


「あ、こんにちは。」
「なにしてるんですか?」
「放射線の線量測ってます。」
「いま、どのくらいですか?」
「いまねー。え~と、1.5マイクロぐらいですかね。」
「高いんですか?それって・・・」
「う~ん。ちょっと、ちょっと高いですね。」
「5年後に髪の毛抜け始めるって、本当なんですか?」
「うそでしょう。」
「うそ?」
「はい。」
「よかった~」
「大丈夫と思いますよ。」
「よかったよ。」

「このまま、1.5、毎日浴び続けると、何年後に出るんですか、症状」
「出ないかも知れない」
「ふ~ん」
「そう。あの~、子どもとか、そういう小さなお子さん達とか、成長期の人達というのは、でも、出るか出ないかというと、わからないくらいのレベルなんですよ。」
「ふ~ん」
「ただ気をつけていかないといけないし、食べ物の中にも放射性物質が含まれてきますから、そういう内部被曝というんですが、そういうものも含めて、これから、気をつけていかないといけないというか、健康監視区域というかね」
「ふーん」
「地域ではあると思います。」


放射線のリスクは、年齢や生活実態で異なります。
特に、乳幼児や妊婦は、リスクを高く見積もるべきだと、木村さんは考えていました。

訪ねたのは、妊娠中の女性がいた、渡邊(わたなべ)さんの家。
長女の里紗さんは、男の子を出産していました。

【母親・渡邊敦子さん】
【長女・里紗さん】
【次女・麻里さん】

木村さん「はい。それじゃあ。どうも、わざわざ、調査に協力していただきまして、ありがとうございます」
敦子さん「よろしくお願いします。」
木村さん「実際これまで」(・・・略)

本当に、この家に住み続けて大丈夫なのか。
家族ひとりひとりの外部被曝量を調べることにしました。

木村さん「ちょっときつい話になるかも知れません。ここ、汚染、やっぱり高いです。」
敦子さん「うん」
木村さん「汚染レベルが高い所で、若い方々、小さな赤ちゃんがいらっしゃったりする、そういうところで・・・
ただ、今の状況では問題ないと思うんですが、それがどう影響が出て、どう出るかという推定、推測していって、本当に ここに住んでいいのか、どうなのか、というのも含めたお話を考えていかないといけないと思うんです。」(・・・略)

家族全員に、携帯型の線量計を渡し、1日の被曝量を記録してもらいます。
それを一週間続け、今後どれだけ被曝が積み重なっていくのか予測します。

次女の麻里さん。長女の里紗さんと赤ちゃん。両親と、祖父母。
渡邊さん一家、7人の調査が始まりました。

家族の行動は、ひとりひとり違い、被曝の仕方も変わってきます。

祖母のフク子さんは、毎日5,6時間、近くの畑で農作業をしています。

【祖母・フク子さん】

スタッフ「線量計は見せてもらっていいですか」
フク子さん「いま、わたしが」
スタッフ「もってます?」
フク子さん「今日の朝からゼロにして、6になってるね。家出るとき、3時半ごろ出るときは、3だったの。」
スタッフ「いまはもう・・・」
フク子さん「5時ですか」
スタッフ「5時だ。6なってます」
フク子さん「昨日は10だったの、うちにかえったら。」
スタッフ「うあー」
フク子さん「うん」

【祖母・敦子さん】

母親の敦子さんは、隣の町に勤めに出ていて、日中は家にいません。

「奥さんはどこにもっていますか」
「今、ポケットの中にあります。あれ。ありますね。」
「はい」
「今日は仕事に行ってたんで、今日、4ですね。昨日、寝るまでに10ぐらいまでなってましたけど。」
「家の方がたかいなって」
「感じますね。娘 、1日部屋にいて、子どもと一緒にいても、やっぱり、朝起きたら、高くなってたんで。やっぱり心配ですよね。赤ちゃんいるから・・・」

【長女・里紗さん】

里紗さんは、生まれたばかりの遥生(はるき)くんと、一日中ほとんど、この部屋ですごしています。
出産のために帰ってきた実家の汚染は、予想外でした。

【遥生(はるき)くん】

スタッフ「今日1日で」
里紗さん「今日1日で、今の段階で、6です。」
スタッフ「朝、何時から」
里紗さん「朝、6時・・・」
スタッフ「朝6時から:
里紗さん「はい」
スタッフ「6マイクロ」
里紗さん「ええ」
スタッフ「これは、明日の朝になっていると、だいたい10・・・」
里紗さん「くらいになっていると」

スタッフ「里帰りして、 安心して、子どもさん産めて良かったと思ったけども、ちょっと心配になっちゃいましたね。」
里紗さん「そうですね。どっちかというたら帰りたいから、帰ろうかなとか・・・」
スタッフ「ちょっと思っています」
里紗さん「はい」
スタッフ「帰るというのは」
里紗さん「帰るというのは、自分のアパートがあるとこ」

里紗さん「同じじゃないですか、わたしと。こう部屋にいて、同じ分だけ浴びているじゃないですか。浴びているというか、じゃないですか、子どもの方が心配・・・」

調査結果です。
一日中家にいる里紗さんと赤ちゃんは、1週間で64マイクロシーベルト。
外へ出かける次女や母親と、あまり変わりません。
このままだと、 年間で3.3ミリシーベルトになると予測されます。
一般人の限度量とされる1ミリシーベルトの3倍です。

木村さんは、家族に結果を伝えました。

敦子さん「娘、線量高いから、それで心配ですね。
赤ちゃんいるから、ね、口聞かないし、痛いとか痒いじゃないから。
それが一番、やっぱ、娘の母親としても、やっぱ、孫のばあちゃんとしても、心配ですし。
できれば、少しでも、1日でも長く、ここにいてもらえば、いいんですけども。
本人も帰りたい、というか、離れたとこ行こうかなという感じなんで。
アパートの方が、よっぽど、いいのかなとか思うんですけども。
面倒みてあげられない分、心配ですね。」




南杉田では、小中学生の子どもを持つ親達も、不安を抱えていました。
鈴木さん一家です。

【中学1年生 鈴木皓大くん】

中学校1年生の鈴木皓大(こうだい)くん。

【小学4年生 穂乃香さん】

小学校4年生の穂乃香(ほのか)さん。
両親は、どうすれば子どもを守れるのか、考えあぐねていました。

【父親 和夫さん】

和夫さん「子どももすぐ、あの事故の後、保険に入れましたからね。
子どもは、18歳以上じゃないと、それ入れないんですよ。
あの~、ガン保険とかに。
ガンとか、心筋梗塞とか、あの三大疾患ありますよね。
それ18歳以上なんですよ。入れるのが。
まだ小学生なんで、そこの部分、入れないんですよ。
でも、まあ、万が一のこと考えれば、何もないよりいいのかなと」


木村さんは、学校に通う年齢の子どもは、乳児と被ばくの仕方が違うと考えていました。
子ども達は、事故後も外に出て遊んでました。
被ばくの仕方は、学校の場所、部活の種類などによって、変わります。
木村さんは、子ども達の生活実態に生活に即して調査する必要があると考えています。

和夫さん「マスクって、有効なんですかね
木村さん「えっとね。もうマスクいりませんね。」
母親「だって、ほのちゃん。」
木村さん「で、あの~。あれですね。土に付着して放射能が、再浮遊するときがあるから」
母親「ほこり、風の強いとき」
木村さん「そう、そう。風の強い日だけはしてくださいと言ってますが、それ以外は、この暑いのにやってもらったら、もう、それだけで大変じゃないかな、と思っています。」

木村さんは、子ども達が毎日通う通学路の放射線量を調べてみることにしました。
子供たちの日常と、切り離せない生活空間です。
穂乃香さんが通う杉田小学校。
5月に、市が、校庭の除染を実施しました。

木村さん「1.05(マイクロシーベルト/毎時)ぐらいですね。」

子ども達が寄り道しそうな空き地がありました。

スタッフ「上がってます。 2.11・・・13」

木村さん「えっ。ちょっと待ってください。
3.2ありますよ。3.29・・・27・・・26・・・。
これ、たかー」

市街地に、高い放射線量の土地が潜んでいました。

通学路の測定結果です。
始め、毎時1マイクロシーベルト以上の場所が続きます。
市街地で一旦線量が下がるものの、途中には、3マイクロを越える場所も見つかりました。

学校では、どんな活動をしているのか。
穂乃香さんの部活はバスケットボール。
一方、皓大くんは野球部に入っています。
この違いが、二人の調査結果に現われました。

子ども達の外部被ばく線量です。
兄の皓大くんは、一週間で73マイクロシーベルト。
このままだと、1年間で3ミリシーベルトに達します、
グランドにいた兄の方が、体育館で部活をする穂乃香さんに比べ、高くなっていました。



さらに、木村さんは、岡野さんと共に、子ども達の内部被ばくも調査しました。

木村さん「(皓大くんに)そうそうそう。そうそう。ずーと。じゃあ、こっから、そう。
じゃあ、セシウム量はというと。少し出てるかなぁ。うん。」
(略)
(穂乃香さんに)そう。かがんでください。」

兄と妹の違いは、内部被ばく線量にも現われました。
皓大くんは、59.3マイクロシーベルト。
穂乃香さんは、33.2。
皓大くんの方が、グランドで土ぼこりを吸った分、高くなった可能性があります。



渡邊さん一家の長女、里紗さんも、検査を受けました。
里紗さんは、遥生(はるき)くんを母乳で育ててます。
内部被ばくの量が多いと、母乳にも影響が出ることが懸念されます。

木村さん「はい。うん。少しねえ、やっぱり、セシウムが出ていますね。お母さんねえ」

結果は、9.3マイクロシーベルト。
内部被ばく線量はわずかでした。
一週間で、64マイクロシーベルト(年間3.3ミリシーベルト)という外部被ばく線量の方が、むしろ、注意を要します。

赤ちゃんとその母親、そして、子ども達。
調査の結果、現時点では、年間3ミリシーベルトを越える外部被ばくの方が、より深刻だとわかりました。


柳澤解説員「VTRでご覧いただいたようにですね。その、赤ちゃんがいるケース。それから、小中学生が学校に通うケース、ということで、子どもの被ばくの実態というものを見てきたわけですが、トータルで、どういうふうに子どもの被ばくというものを受けとめていけばいいのでしょう」
木村「そうですね。大人に比べて、子どもの被ばくリスクというものは、3倍高いというふうにいわれてます。
だからこそ、今回の調査によって得られたデータとして、 年間3.3ミリシーベルトというような値というのは、それは見過ごすことは出来ないでしょう。」
柳澤「文部科学省が、今、当面、目指している数字というのは、年間」
木村「1ミリシーベルトですよね。」
柳澤「そうですよね。」
木村「だからこそ、それを含めても、やはり高い。3倍高いということになってしまいますので、やはり、そこは気をつけて行かないといけない」
柳澤「見過ごすことはいかないという」
木村「そうでしょうね。」
柳澤「特に、屋外、外で活動している子どもさんの場合には、被ばく線量が高く出てますよね。」
木村「はい。そうです。だからこそ、その、行動記録というか、そういう外部被ばく線量の推計というのは、必要になってくるでしょうし。で、もし、高ければ、それは時間で制限することによって」
柳澤「つまり、屋外での活動時間を、一定の時間で区切るということですね。」
木村「そうですよね。そういうことをする、ということが大切になってくるでしょう。」
柳澤「さらにあの、VTRの中にありましたけども、学校への行き帰りで通る通学路にも、なかなか看過できないケースがあるようにリポートされてましたけれども」
木村「そうなんですよ。だから、その通学路だけでなく・・・通学路でも、通学路をきちんと測っていくことによって、その、危ない場所というのを、線量が高い地域というのを、推定すること、特定して、そこで遊んでしまうようなお子さん達が、やっぱり、いらっしゃいますから、そういうところにも、気をつけていかなければいかない。
ただ、 道だけを測るのではなくて、その周り、周辺も、きちんと見ていかなければいかない」
柳澤「子ども達の行動パターンに沿って、丁寧に調べていかなければいけないという。」
木村「そうなんですよね。はいはい。」
柳澤「となってくると、家の中にいればいいのかということになっちゃいますけど、そうとも言えないですよね。」
木村「はいはい」
柳澤「赤ちゃんがいらっしゃいました渡邊さんのお宅のケースなんか、家の中でも、やはり高い線量でてましたよね。」
木村「そうなんです。だから、今回の調査の中でも、その、家の内外という、あの、測定を行ったことで、初めて高い地域があると、その高いお家があるということですよね。」
柳澤「で、その家もですよね。家がどういう構造なのかによって、やっぱり違いがあるのでしょう」
木村「そうです。で、たとえば、鉄筋コンクリートであれば、遮蔽効率は5分の1になると。
えと、遮蔽効率は5分の1じゃない、遮蔽効率は5倍ですよね。」
柳澤「うむ」
木村「だから、空間線量としては5分の1になると。 」
柳澤「5分の1になるんですか、鉄筋コンクリートだと」
木村「そうそう。 で、木造家屋だと2分の1に減るというふうに言われてますので、家屋の構造物によっても、遮蔽効率が変わってきます。」
柳澤「うむ」
木村「きちんと見ていかないといけないでしょう。」
柳澤「そうはいっても、家の中にいても被ばくしてしまうということになると、」
木村「はい」
柳澤「どうしたことだとなるわけですけど、そうなると、いよいよ、今言われている除染ということに踏み込まざるをえないということになるんですか」
木村「そうです。結局、その、長くその地域で、自分の家で、中で生活しようと思えば」
柳澤「住民の皆さん、ほとんど、そうだと思いますけどもね」
木村「そうですよね。だから、そういうところになってしまえば、除染しか考えられないのかな。いまのところでは、そう考えてます。」
柳澤「あの赤ちゃんがいた渡邊さんのケースでですね。その辺、いったいどういうふうに選択すればいいのかということで、悩んでいらっしゃいました。
その辺のことを、VTRでご覧下さい。」


木村さんは、被ばくの実態が明らかになった渡邊さんの家を、再び訪ねました。
家にいるだけで、高い線量を浴びてしまう現実に、どう対処すべきか、一緒に考えることにしたのです。

【母親・渡邊敦子さん】
【長女・里紗さん】
【次女・麻里さん】


敦子さん「今の、ね、この状態でいると、やっぱ、精神的なストレスっていうのを感じているんですよね。娘自体が」
木村さん「そうですよね。 麻里ちゃんなんか特にそういう感受性の強い娘ですからね。」
敦子さん「そうです。だから、この取材受けてから、体調悪いんですよね。ほんきに」
木村さん「うん」
敦子さん「受けたことによって、今まで知らなかったことを、」
木村さん「そうですよね。」
敦子さん「知ってきていることで」
木村さん「かなりショックあると思います。」
敦子さん「みたいです。ここにいて、自分が、」
木村さん「うんうん」
敦子さん「やっぱ、あの、子ども生むときに、」
木村さん「うん」
敦子さん「なにかの、その、リスクを背負わないといけないかなとなった時に、」
木村さん「うんうん。」
敦子さん「不安というのが、すごく大きいみたいですね。」
木村さん「はいはいはい。」
敦子さん「う~ん」
木村さん「そうですね。何かを待ってたら、結局、手遅れになる可能性もあるので、」
敦子さん「はい」
木村さん「やっぱり、自分方から意識的に動くということでね。」
敦子さん「う~ん」
木村さん「うん。本当に難しい問題ですよね。」



市の全域にわたる詳細な汚染地図を公表した二本松市。
市長は、住宅地や通学路、道路など生活空間の除染をおこなうと表明しました。

【二本松市長・三保恵一さん】

「二本松。私は、あの、究極的には、全て除染すると。
本来は、東京電力・国が、私は、やるべきであると判断しています。
それでも、東電や国の対応を待っている訳には、いかないと。
すでに、この放射線の中で多くの人達が、被ばくをしているという状況でありますので、
二本松市内の行政区、町内会の役員の皆さんと協議をしながら、今、進めているところです。」

市は、除染の具体化に向け、どのようなノウハウや労力が必要なのか 木村さんに相談しました。
そこで、木村さんは、モデルケースとして、渡邊さんの家で、除染を試みる事にしました。

木村さん「1.7ぐらい。」

効率的な除染には、汚染の高いところと低いところ、その分布を把握する必要があります。
まず始めたのは、家の周りの空間線量の測定です。

木村さん「え~と、2.2ぐらいですかね。2.2マイクロ」

家の裏手の放射線量が高いことがわかりました。

木村さん「う~んと、2.4ぐらいですか。」

家の中も、部屋によって線量が違います。
どの部屋の線量が高いのか調べることで、外の除染ポイントを見極めることができます。

木村さん「ほんのちょっとだけね、高いです。1.2マイクロシーベルト・パー・アワーぐらい、ありますね。」
敦子さん「はい」
木村さん「うん」

2階には、 二人の姉妹の部屋があります。

木村さん「すてきな部屋やねえ」
麻里さん「あはは」
木村さん「1.2ぐらいかな。」
麻里さん「1.2」

(里紗さんと赤ちゃんの部屋)
木村さん「山側の方、なんかあると思ったんだが、こっちの方、直に、山側の方になるんですか、こっちが」
里紗さん「はい山側です。」
木村さん「ああ、で、そうか、2階だから、こっち側も外側は庭の方になるわけですね」
里紗さん「はい」
木村さん「ここの里紗さんのお部屋も1.2マイクロぐらいですかね。うん」


調査の結果、1階は裏庭に近い部屋が高く、さらに、1階に比べて、2階の方が高いことがわかりました。
外の測定結果から、裏庭の汚染が、部屋の線量を高めていることがわかりました。
一方、地中30センチの土壌分析の結果、セシウムの99%が地表から、5センチにとどまっていました。


7月末。
早朝から、市の職員が渡邊さんの家に集まってきました。

木村さん「おはようございます。」
市職員「おはようございます。」
市職員「おはようございます。」

木村さんは、家一軒の除染にどのくらいjの時間と労力がかかるのか、市の職員と共に、確かめることにしました。

(略)
木村さん「よろしくお願いします。」
市職員「はい」
市職員「はい」
(略)
木村さん「え~と、手分けして、剥いでいくと。5センチ」
市職員「5センチ」
木村さん「約5センチ。で、剥ぐときも、 ほじくり返して攪拌しないように、掘った分、入れてしまうようにすれば、その、混ぜないから・・・」

市から応援に来たのは、職員8人。
まず、手をつけたのは、家の周囲の土です。
5センチ取り除けば、線量が下がるはずです。
しかし、固く締まった土は、はぎ取るには容易ではありません。
9人がかりで、およそ、5時間。
家の周りの土は、一通り取り除くことができました。

問題の裏庭に、意外な放射線源がありました。
雑草が生えないように敷いたカーペットです。

「高いですね。表面は・・・3.5マイクロぐらいありますね。」

「祈るような気持ちですね。
1マイクロはある。1マイクロ分は、下がりますね。
今、だいたい2マイクロ。2.1マイクロなりますから」

大量の放射性物質を吸収したカーペット。
裏庭の除染は、これを取り除くことで、かなり進みました。

祖母のフク子さんと、母の敦子さんも、作業にあたります。

フク子さん「ひ孫だの、孫だの、十神(とうがみ)さ、放射能だから行かないなんていわれたらさ。
ばあちゃん死ぬまで、顔見られない。ね-。」
スタッフ「来てもらいたいですね。」
フク子さん「そうだよね。こうして、今、現在いたって一日でも顔見ないといられねえんだから。」

フク子さん「ひ孫のためなら、エンヤコーラ。ふふふふふ、はははは。(不明)だろ」

取り除いた土や砂利などは、 祖父の勲さんが、家の休耕田に運んで、仮置きします。

スタッフ「4.3・・・4・・・5・・・4.5ぐらいですね。」

今回の除染作業では、土嚢袋400。
少なく見積もって、4トンの廃棄物がでました。
最終処分場所は決まっていません。


木村さんは、線量が高い2階の除染にとりかかります。

スタッフ「素人じゃないですね。この格好は」
木村さん「はい。あの。昔、職を、一回、職をなくしてたときに、やってましてたから」
スタッフ「へぇ」
木村さん「1年半、塗装工を・・・」
スタッフ「高いとこもあるんですか」
木村さん「ありますね。もっと、あの、こんな、まだ低い方ですよ。はい。」

2階の線量が高い原因は、壁や瓦に付着した放射性物質ではないかと、木村さんは推測しています。
赤ちゃんがいる部屋のベランダと壁を、ブラシでこすり、水で洗い流します。
瓦で葺いた屋根も、高圧洗浄機で、汚れを落としていきます。

スタッフ「今まで、雨降って、流されてはいるんじゃないですか」
木村さん「そう思うでしょ。でも、やっぱりね、汚れはついているんですよ。
上見たら水垢ってんですか、そういうのがくっついているから、水垢とか、そういうところに吸着するんじゃないかなと思いますね。
そういうのを、本当はね。デッキブラシなんかで落としながらね、やっていくというのが一つなんですが、まあ、危ないから、まずは、高圧洗浄で落として行くと。うん。」

屋根の、もう一つの除染ポイントは、雨どいです。
この家の雨どいには、ところどころに、土がたまっていました。
雨に含まれた放射性物質が、土に蓄積されている可能性があります。

(雨どいに溜まった土を測定して)
木村さん「すご、ほおー。11.7ですね。11.7マイクロです。」

(雨どいの管からつまった土を取り出そうとたたいて)
「あ、ない」
「あ、出た」
「出てきた」
「重なってる、重なっている。」
「ずいぶん入っているもんですね。」
「すごいですね」

木村さん「雨どいのこの部分は、たまりやすいですね。」

屋根の除染には、8時間かかりました。

結果を確認しました。
除染前、 毎時1.2マイクロシーベルトだった、祖父母の部屋です。

木村さん「0.65」

(2階へ)
木村さん「どうも」
里紗さん「あはは」
木村さん「こんにちは」

一番気になる、2階の里紗さんと赤ちゃんの部屋。
以前は、1.2でした。

木村さん「それでも、やっぱり、下がっていますね。0.64」
敦子さん「一番低くなっている」
木村さん「ここ少なくとも、1.2近くありましたから、 最初。うん。
だから、まあ、半分くらいに落ちたと。
0.63くらいでしたから、非常に安定しているんですよ。
まあ、ベランダの除染もきれいにできて、屋根の除染ができたってのが、効いているように感じます。」
遥生くん「んきゃ」
木村さん「あははは。」
里紗さん「ははは」
木村さん「まあ、本当に、初めての・・・除染も初めてだったんで、ドキドキだったんですよ。
どのくらい変わるのか経験も、まったくないまま、ここの線量下げようと一心でやったという結果で。
それで、データを見たら、半分まで落ちるんだいうことで」
敦子さん「はい」
木村さん「ちょっと勇気を与えていただきました。はい」

除染の前後で比べると、ほぼ6割に下がっています。
里紗さんの部屋は、0.64。
以前の53%に下がりました。
被ばく線量も半分に減る可能性があります。

敦子さん「はい。こんなに下がるなんてね。」
木村さん「そうですね。屋根の影響ってだったという感じですね。」
敦子さん「一人でやってたら絶対にね、挫折しましたね。重たいし、暑いし。」
木村さん「そうでしたね」
敦子さん「ねぇ。本当に。だけど、やっぱり、みんなでやってくれる、手伝ってくれるって中で、少しでもね、孫とも一緒にいたいし、子ども達とも一緒にいたいし、そういう思いの中で、やってきましたけど」
木村さん「はい」
敦子さん「やっぱり、ばあちゃんの、その、誰も帰ってこれない家では、全然楽しくないという一言で、がんばろうと気になりましたね」
木村さん「そうですか」
敦子さん「うん」



柳澤「木村さん。」
木村「はい。」
柳澤「実際に、除染やってみて、どうでした。」
木村「これは、きつかったですね。」
柳澤「きつかった」
木村「これは、もう2度とやるかという気持ちと共に、その、渡邊さんちの笑顔が取り戻せたという喜び。だから、これを続けることによって、自分がやったという気持ちという、この不思議な・・・不思議な気持ち・・・」
柳澤「木村さん、いままで、除染の経験ってあったんですか」
木村「ないんですよ。」
柳澤「VTRでも、初めてだということをおしゃってましたけども」
木村「はい。除染は、いろんな研究者の方々が、もう手がけられてましたし、そういう人達にお任せするような形を考えてたんですよ。」
柳澤「うん」
木村「でも、今回のような、その、小さな赤ちゃんがいらっしゃる、生まれたばかりの赤ちゃんがいらっしゃるような家庭が住めないような形になる。で、みんな家族がばらばらになってしまうというようなことに、なんか、やっぱり、心が痛み、いや、心が痛めてしまいましたよね。」
柳澤「うん」
木村「だからこそ、じゃあ、仕方がない、除染を手伝うかというような形で、考えたわけです。」
柳澤「まあ、木村さん。除染の専門家の方がいらっしゃると言うことなんですけど、まあ、あの、特殊なケースで、原子炉の除染とかというケースがあってもですね」
木村「はいはいはい」
柳澤「生活環境に即して、生活環境の中に、降り注ぐ放射性物質を取り除くなんていう、そういうことの専門家って、実際、いるんですか」
木村「この3.11以降に、そういう方が、新しく研究を含めてやられてきた方々がいらっしゃいますが、日本では、まず、その、それ以前の方は、いらっしゃいませんよね。」

柳澤「岡野さん。それ、たとえば、いまから、もう25年前のチェルノブイリの原発事故、あの事故の後の、その当時のウクライナで、その、除染ということについては、どういった、現実があったんでしょうね。」
岡野「やっぱり、あの頃はですね。主に、やっぱり、水で洗うとかね」
柳澤「うん」
岡野「必要があれば、建物を壊してしまうとか」
柳澤「うはぁ」
岡野「やることは、どっちかというと、まあ」
柳澤「ちょっと乱暴なこと」
岡野「まあ、荒いんですよね。」
柳澤「うん」
岡野「ただ、日本の場合は、非常に特殊でですね」
柳澤「ええ」
岡野「しかも。あの、”ホットスポット”と”ホットエリア”とありますからね。」
柳澤「その冒頭でも、ご説明していただきましたけれども」
岡野「そう、部分的に強いところを汚染するという”ホットスポット”」
岡野「しかも。あの、”ホットスポット”と”ホットエリア”とありますからね。」
柳澤「スポット」岡野「それから、周りからくる、広い範囲の汚染エリアとね」
柳澤「広がりのある”ホットエリア”と」
岡野「そのところの表面の泥をとるとかね。そういうやり方が、今回、いろいろと経験を持ってきたわけですよね。」
柳澤「うん。そういった意味で言うと、チェルノブイリでやったことっていうのは、まあ、決して、賞賛されるケースではないにしても、それを一つの参考にするという意味では、我々、いろいろ学ぶべきものもあるということなんですね。」
岡野「そうです。非常に学ぶ面もありますけど、それをそのまま、右から左に、我々は」
柳澤「やるわけにはいかない。」
岡野「やるわけにはいかない。」

柳澤「で、木村さん。」
木村「はい。」
柳澤「この除染の大切さというのは、一言で言うと、どういうところにあるんでしょう」
木村「まず、測る。測って」
柳澤「測るって、放射性物質の放射線を測って」
木村「放射性物質を測る。」
柳澤「はい」
木村「測って、その、家の内外で測ると。で、その高いところを特定していく。」
柳澤「うん」
木村「その高いところが、何であるか。それを見て、それが取り除けるものであれば、自分がやれるところから、やっていく」
柳澤「うん」
木村「というような事。これが除染の、最初の、手始めかなと考えてますね。」
柳澤「これ、だけど、高いところ登ったりとかですね。」
木村「はいはい」
柳澤「雨どいの中でいろんな土をとるとか。これ」
木村「うんうん」
柳澤「個人でやるにしても、なかなか大変で、そう簡単に出来るもんじゃないでしょう」
木村「ちょっと難しいと思いますよ。で、それを、がんばってやられて、”下げるんだ”と、下げる代わりに、ケガでもされたら、もっと大変なことになりますから」
柳澤「しかも、やるにあたっては、放射性物質を吸い込まない、いろいろな注意も必要なんでしょう」
木村「そうですね。だから、マスクはしないといけないし。で、当然、手に付着しないように、そういう、ゴム手袋等、そういうものは、除、あの、防護、放射線防護に対しての知識も必要になってきますよね。」
柳澤「そういった意味で、トータルに、いろんな除染をやれる体制に、決して、なっているとは言い切れないということなんですよね」 
木村「言い切れませんね。で、しかも、それが一体誰がやるのかと、」
柳澤「うん」
木村「これが市民のレベル。一般住人が、それをやっていけるには、限度があるということが、今回、明らかになりました。」
柳澤「やるとなると、当然、お金もかかるわけでしょう。道具も必要だし。」
木村「そうです。そうです。だから、今回は出来るだけ、実は、お金もおさえて、自分たちで、その、ゼロからやってみたら、どうなるんだということを考えた訳なんですよ。」
柳澤「うんうん」
木村「それを考えた上でも、一概に、一家庭で、それを、すべてやれるかというと、無理だなあということがわかりました。」
柳澤「今、国でも」
木村「はい」
柳澤「国でもね、除染ということを、法律を作って対応していこうという動きがあるんですけれども」
木村「はいはい」
柳澤「その中でも、除染をする地域というのは、国が定めるんだと、ただし、その、何を基準にして除染対象地域にするかどうか、基準の定め方も難しいというテーマも、問題も、出ているわけですけど」

木村「そうですよね。だから、線量で区別する訳ではなくて、たとえば、放射線に対する影響は高い人。だから、子ども達とかですね。」
柳澤「うん」
木村「その、放射線弱者というような方々に対して、そこを優先するとかですね。」
柳澤「うん」
木村「そういうことが重要になってくるんじゃないかと思うんですよね。」

柳澤「岡野さん。除染といっても、放射性物質が消えてなくなる訳じゃないですよね。」
岡野「そうですね。」
柳澤「これ、どこに処理すればいいのかという。VTRの中では、休耕田に持って行ってですね。一応置いておくという格好ありましたけど。それに辺についても、目処立ってないわけですよね。」
岡野「そうですね。やっぱ、あの、取り除いたものを、どこへ保管するとか、どういう始末をするのか
ということは、(不明)。ういうことを見誤ると、何の意味のないことになりますからね。」

柳澤「その辺のところ、なかなか目処立てられないのが、今の現実なんですかね。」
木村「そうですよね。だから、各市町村で自治体で処分場に持って行く、それを1ヵ所に集めてしまうと、自分のところは、だけが、ということは、被害者意識というような形になってしまいますよね。」 
柳澤「うん」
木村「そうならないように、各市町村が、それぞれを持ち込んで作るというような、仮置き場を作る。
柳澤「うん」
木村「で、最終処分場は どこに持っていくかということは、順をやっていかないといけないと思いますよね。」
柳澤「まあ、それにしても、放射性物質というのは、1日してなくなるわけではなくて、1年、2年と長いスパンでかかって行くわけですよね。そうなってくると、我々も、当然、世代を超えて、長い、否応無しの向き合い方を、さるをえないことになっていきますよね。 
そういう中では、我々自身もですね、今、いったい現実がどうなっているのか。それを考える上で、今、木村さんおっしゃたように、弱い立場、特に、子ども達の立場にたった考え方で、一体何をすればいいのかということを、常時、絶えず考えていくというのが大切に なってくるということにになるのでしょうね。」
木村「そうですね。その通りだと思います。」




取材協力/佐藤斉 遠藤暁 高辻俊宏

撮影協力/丹野進


語り/鹿島綾乃

撮影/太田信明 服部康夫
音声/佐藤健康
技術/菅谷将信
映像技術/小林秀二
CG制作/高崎太介
編集/佐藤友彦 青木孝文
音響効果/最上淳
ディレクター/山口智也 石原大史 七沢潔
制作統括/増田秀樹

制作・著作 NHK

ETV特集 ネットワークでつくる放射能汚染地図3
子どもたちを被ばくから守るために




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