2011年6月8日水曜日

文字起こし 「ETV特集 続報 放射能汚染地図」

2011年5月15日に放送された「ETV特集 ネットワークでつくる放射能汚染地図 ~福島原発から2ヶ月~」の続報です。
6月5日に放送されました。
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ETV特集
続報 放射能汚染地図


【福島】

ETV特集。今夜は、5月15日に放送した「ネットワークでつくる放射能汚染地図」の続報です。

[木村真三(しんぞう)さん 放射線衛生学]

木村真三さんは、放射線衛生学を研究する科学者です。
福島原発で事故が発生してから、被災地で放射能の調査を続けてきました。

「250マイクロシーベルト毎時。」

[岡野眞治さん 放射線計測]

岡野眞治(まさはる)さん。放射線測定の草分けの科学者です。
二人が使っているのは、岡野さんが開発した最新の測定記録装置です。

「30マイクロ振り切りましたね。」

測定のため走った距離は3000キロ。
データを元に放射能汚染地図ができあがりました。
汚染はマダラ状に分布していました。

木村さんは、さらに、土壌調査も行いました。
福島各地で採取したサンプルは、およそ50。

[福島第一原子力発電所 正門]

「あぁ、ここですね。」
「あぁ」

前回の番組では、積み残した課題がありました。
木村さんは、原発から1.7キロの地点で、土壌のサンプルを採りました。
プルトニウムが見つかるのではないかと、考えたからです。
プルトニウムは、これまで、原発の敷地の外では検出されていません。

[プルトニウム]

放射性物質の中で、最も毒性の強いとされるプルトニウム。
呼吸器に入ると肺癌を引き起こす危険性があります。



【石川】

[金沢大学]

サンプルが持ち込まれたのは、プルトニウム測定が出来る金沢大学です。
この度、結果が出ました。

また、前回の番組放送後、木村さんのもとには、自分の町も測って欲しいという声が多数寄せられました。
木村さんは、今回、福島県南部のいわき市を調査します。
今回、安全と思われていた地域からも、放射線量の髙いホットスポットが見つかりました。
放射能汚染についての最新報告です。



続報
放射能汚染地図



【東京 スタジオ】

[柳澤秀夫 解説委員]

「今晩は。
今VTRでご覧頂きましたように、今夜のETV特集は、5月15日に放送しました番組の続報です。
スタジオには、放射線衛生学が専門で、原発事故直後から現地で調査を進めています、木村真三さんと、それから、放射線測定のパイオニア、岡野眞治さんにお越し頂きました。今晩は、よろしくお願いします。」
「お願いします」
「今日はスタジオに岡野さんが使っていらっしゃいます、開発された放射線測定装置を、お持ち頂きました。
え~と、あの、岡野さんの脇にあるやつ、その装置ですね。」
「はい。」
「で、今、画面に映っていますけど、これは今、今現在のスタジオの放射線の状態が判る状態ですね。」
「はい。」
「で、これが、今、これが放射線のリアルタイムの強さですね。」
「そうですね。はい。」
「ですね。それで、これが積算していく、時間の経過と共に溜まっていく放射線の強さで、」
「はい。」
「これが、放射性物質毎の、えー、強さ出てますよ。大丈夫ですか、これ、今、あの、放射線、このスタジオは…」
「あ~、真ん中に出ているのは、天然のカリウムです。どこにでもある」
「これですか、」
「ええ」
「ちょっと高く出てますけど」
「そのほか、高いところに、ちょっとあるのはトリウムですけど、」
「はい。この辺ですね。」
「そうです。」
「はい。」
「あの。」
「大丈夫ですか」
「現在はね、ここはね、そういうものがね、ないわけで、天然の放射性物質しかないわけでね。」
「で、この装置の、一番の特徴というのは、岡野さん、どういうところにあるのですか」
「これはね、カメラがついてまして、」
「はい。こうやって映せて」
「カメラがそこの場所をね、様子を見ながら、放射線の強さを時々刻々とバーグラフで現わせられる。」
「はい。」
「それと同時に、どういう種類の放射性物質が、そこに存在しているか。それをスペクトルというか、その、画像でもって表現できるような機械です。」
「う…ん」
「だから、放射線の強さと同時に中身もわかる、というような機械ですね。」
「放射線の測定というのは、点で、今、我々は考えているのですが、点ではなくて、面、拡がりをもって全体像が判るという事ですか。」
「そうですね。測定器を持っていって、そこで測るんじゃなくて、この機械をカメラと一緒にして、走りながら、そこの場所を映像で映しながら、放射線のレベルをリアルタイムで、表現するということと同時に、放射線の種類も表現できるという機械です。」
「木村さん、これを使ってですね、実際に現地を調査されたわけですけど、それ以外にもですね。VTRにもありましたけど、土壌も調査されていますね。土壌調査のポイントとは、意味というのは、どういう所にあるんでしょう。」
「はい。土壌というのは、放射性物質が降り注いだ後、その汚染の拡がりというものが、どういう風なものになっていくのか見えてくる。長期的な状況が把握するということが出来るというような利点がありまして、土壌調査を同時進行でおこなってまいりました。」
「放射性物質の中で、我々が、今一番気にしてます、関心が高いもののひとつに、プルトニウムというものがあります。VTRにもありましたけれども、第一原発から1.7キロ離れた地点で採取した土壌のサンプルから、はたして、プルトニウムが検出されたのでしょうか。」



【石川】

[金沢大学 山本政儀さん]

福島第一原発の近くで採取したサンプルの分析にあたった、金沢大学の山本政儀さんです。
土壌サンプルに硝酸を加え、2時間熱し、その後、溶液と泥を分離します。

「これ、ふた…(略)」

さらに溶液を、化学分離し、プルトニウムを精製、ステンレス板に電着させ、アルファ線測定装置にかけるのです。

「一番わかりやすい…(略)」

もともと、土壌の中には、かつて核保有国がおこなった大気圏内核実験で放出されたプルトニウムが存在します。
それと、今回、原発から出たプルトニウムを区別するため、3種類のプルトニウムの比率を測定します。

「ちょっと汚くなった…(略)」
「はい。」
「これプルトニウムね。」
「はい。はい。」
「これがたぶん、プルト238なんだけど…(略)」


[6月1日]

およそ3週間後、分析結果が出ました。
プルトニウム238と、他のプルトニウムの量の比率です。
通常は、0.03程の数値ですが、今回の測定値は、0.059。2倍ほどの値です。
さらに、ニオブ95など、核燃料が溶融しなければ現われない他の物質も検出されました。
山本さんは、プルトニウムは、原発から出た物と、結論づけました。

「まぁね。ニオブとかバリウムとか融点の高いものが、試料の中にあるという事を考慮すると、かつ、レシオ(比率)が若干高くなってる事も考えあわせると、このプルトニウムは、福島第一の、どの原子炉かは分からないんだけど、そういう可能性が高いのではないかと思われます。」

住宅地で見つかった、原発由来のプルトニウム。
このことは、どのような意味を持つのでしょうか。



[原子力安全研究 田辺文也さん]

「どこまで、飛んでいるか…(略)」

元日本原子力研究所の田辺文也さん。
アメリカ、スリーマイル島原発事故の原因分析に携わってきました。
田辺さんは、原子炉内の冷却水が失われる中で、炉心の溶融、いわゆる、メルトダウンが起こって、プルトニウムが出てきたと考えています。

「要するに、燃料が溶融しなければ、プルトニウムも含めて、テクネチウムであるとか、ルテニウム、その、ジルカロイ、ジルコニウムですね。そういう、沸点が3000度以上、ないし、3000度近ぼうのものは、出てきませんから、それは明らかに、燃料が溶融した、その証拠であると。」

プルトニウムは、揮発しにくく、比重も大きいため、原子炉から外に出にくいと言われます。
それを可能にしたのは何か。
田辺さんが想定するのは、コア・コンクリート反応です。

メルトダウンした燃料が、格納容器に流れ落ち、底部にあるコンクリートに接触することで、エアロゾル状の煙が発生、プルトニウムは、その煙に運ばれて、格納容器の破損箇所を通って、外に出たというのです。

「単純に換算すると、数十キロのプルトニウムが、コア・コンクリート反応で、その、どれだけ格納容器に流れ落ちたという、もちろん、それに依存するわけですけど、それで、その、エアロゾル(煙霧状)になって、格納容器の外に出てくると、一番運ばれやすい、シナリオなんですね。」

プルトニウムを含むエアロゾルは、いつ、どの原子炉から飛び出したのでしょうか。


[3月16日]

[福島第一原発 3号機]

田辺さんが怪しいと睨むのは、3月16日や、21日などに原発から立ちのぼった白煙です。

「起こり…うる可能性が高いとすれば、2号機、3号機。で、やはり、圧力容器が最初に破損した、その~、13日でしたっけ。」
「はい。」
「2号機だと、15日…に、圧力容器が破損したと考えられるんですが、せ。3号機だと3月13日に、たぶん第1回目の、その~、圧力容器の貫通が始まったと思う。ですから、その後に、その~、最初の、その~、溶融炉心とか、コア・コンクリート反応が起こっても、その~、不思議ではない。」

田辺さんは、これは最悪のシナリオだが、
安全のためには、それを前提にして調査をするべきだと言います。

木村さんが採取した土壌データの中で、田辺さんが注目するのは、原発から50キロ離れた地点で、テクネチウム99m(エム)が検出されていることです。
揮発しにくく、比重の大きなこの物質が、長距離移動した事実は、プルトニウムもまた、遠い場所まで拡散した可能性を示しているというのです。

「今、検出されたものが微量であったからといって、その~、大丈夫だと言うことではなくて、ホットスポットが周りにある可能性がある。ですから、もっと調査点をですをね、拡げて、プルトニウムも含めて、きちんと汚染を調べる必要があるということを意味しているんだと思うんですけど…」



[核化学者 古川路明さん]

核化学者の古川路明さんが、さらに、こう指摘します。

「プルトニウムがあるということはですね、他の多くの種類の放射性物質がですね、飛び出している事を示していると思います。
これはやはり、あの~、核燃料の中に入っている、ですね、あの~、極端に言うと全てのもの。核燃料の、自体のウラン、それから、プルトニウムが出ているわけですね。
あと、プルトニウムの先にいく、アメリシウムとか、キュリウムとか、あるいは、ネプツニウムとか、そういうものが、みんな出ていると。
だから、核燃料の中に入っているものが、なんでも出て、それが、中でもプルトニウムが捉まっていると、いうことですね。他のものも、きっと出てくるんだと思います。」



[京都大学原子炉実験所 今中哲二さん]

福島原発事故による放射能汚染を調査する、京都大学の今中哲二さん。
チェルノブイリの汚染地帯にも、20年以上通い続けています。
今中さんは、これまでのデータを見る限り、福島ではプルトニウムの放出は少なかったと考えています。

「あの、チェルノブイリの30キロ圏だったら、セシウムよりもジルコニウムとか、あの~、セリウムとか、バリウムとか、そういったヤツが、初期の頃、非常に強かったんです。」
「なるほど。」
「それで、ですから、う~ん、プルトニウム、ウランも、かなり出ていると思います。」
「はい。」
「今回は、まあ、不幸中の幸いというか、そういう意味では、たぶん、そういう、ウラン、プルトニウム系は、比較的少ないだろうと思いますし…」
「全体的にはですか」
「それから、あの~、ストロンチウムも少ない、ということで、汚染に対しては、比較的に、チェルノブイリの場合に比べると、相手はしやすい。」
「なるほど。」

私達が、放射能汚染のなかに入った今、汚染の現実を直視して、未来の選択をすべきだと、今中さんが言います。

「これからね、結局、あの福島の汚染地帯で、どうするのかと、あの~、もちろんね、あそこを避難した人、どうしても家に帰りたい人もいるだろうし、やっぱり、あんなとこ戻るのはいやだという人もいるだろうし。
まず、向かいあうためには、汚染のデータをちゃんと取って、まさにね、一軒ずつ、いうと僕、取る必要があると思います。」
「まあ、住居を」
「そうです。ええ。ええ。
村、その家、それぞれ、はたしてこれは住むに適しているのか、適していないのかという判断を問われるわけですよね。」
「ええ。」
「それと、まず、最初の資料というか、考えるためのベースは、汚染レベルですよね。」
「ええ。」
「それで、その次に、じゃ、放射能汚染があることによって、人々がどのくらい被爆するのか。」
「うむ。」
「これも、きちんと評価して、測定もしていかなきゃいけないし。
そこに戻って、戻るのか、もうそこを放棄するのかというのは、住んでいる人、住んでた人、が、決められるような形での情報、または智恵とかね、そういうものを、提供していく責任が、本来は東京電力にある。(苦笑)」
「そうですねぇ。」
「だけど、(苦笑)(聞き取り不明)原子力(政策)をやってきた日本の政府にもあるし。」
「うん。」



【スタジオ】

「…ご覧頂きましたように、プルトニウムは検出されました。確かに微量ではありますけれども…。まあ、木村さん、この、微量とはいえプルトニウムが、今回、見つかったということ、木村さんご自身はどういう風に受けとめればいいとお考えですか。」
「このプルトニウム、実際に見つかったといっても、まず1点、わずか1点しか見つかっていない。」
「1箇所だけしか見つかっていない。」
「1箇所だけしか。で、ただプルトニウムの危険性が充分にあるということですので、今後、あの、先ほど田辺先生もおっしゃてたように、広い、広範囲に調べていく必要があるということを考えております。」
「まあ、プルトニウムが見つかってて、他の放射性物質も広範囲に拡がっている可能性が否定出来ないことを前提に考えなきゃいけないということですね。」
「そうですね。」
「で、それをやっていく上で、重要になってくるのは、どういったことなんでしょうか。」
「えぇ、まず、その、これはチェルノブイリの汚染マップなのですが、」
「はい。」
「(南側に)ウクライナがありまして、ウクライナ、(西側に)ベラルーシ、(東側に)ロシアと、」
「かなり広範囲な地図なんですね。」
「広範囲ですね。」
「はい。」
「で、3カ国にまたがる、このまばらな拡がりというが、この汚染地図でもわかっていると思います。」
「色の濃いところが汚染の激しいところですね。」
「はい、そうです。で、さらに、このような広範囲なマップだけじゃなくて、」
「はい。」
「これは、一つの、ナロージチという、私の調査範囲の…、調査地区なんですが、」
「(不明)地区ですね。」
「はい。これは日本の郡部にあたるところなんですが、それぞれの小さな村が、集落があるわけですね。」
「はい。」
「で、それの中心として、ナロージチという町があるんですが、ここにも、様々なばらつきがある、この汚染が拡がっているということです。」
「一つの地区でも、これだけ違いがあるということなんですね。」
「そうです。」
「はい。」
「で、さらに、先ほど今中さんがおっしゃてたように、その各村々、各一軒一軒を見ていかなければならないというのが、」
「これが道路ですね。ここに書いてあるのが。」
「そうです。これは道路なんですが、これは、ある一つの村なんですが、この村の一軒一軒で、こういう汚染のばらつきがある。」
「うむ。」
「さらに、ここには、第一ゾーンに匹敵するような、高濃度汚染地域があるというのが、我々の調査でも、こういう風な地図から、わかっております。」
「うむ…。あの、岡野さん」
「はい。」
「あの、岡野さんの放射線測定の分野からするとですね。今後、その、こういった現実に即した調査をしていく上で、どういうことが重要になってくるというふうに、お考えでしょうか。」
「基本的にはですね、放射線のレベルがどうかということと、その拡がりがどうかとうことと、それと同時に、大事なことは、
どういう種類の放射性物質が出たかということが、非常に大事なわけです。
で、どういう種類の放射性物質が出たかということは、たとえば、今回は、チェルノブイリに比べると、非常にセシウムが多いという特徴です。
で、プルトニウムとか、そのほかの放射性物質、ストロンチウムを含めて、今回、チェルノブイリなんかと比べて、それが少ないという特徴です。
で、それが、いわゆる、事故の様相の、なんというか、一つの判断の材料になるわけですね。
そういう意味で、非常に、どういう種類が、どういう核種があるかということが、知ることは大事なわけです。」
「まあ、VTRのなかでも、今中さんがですね、汚染地帯とどう向き合って生きていくかが重要になるとおっしゃってましたけども、そういう地帯で我々、生きていくとすれば、それが、生きていく上で、いわば、基本になるということですね。」
「そうですね。そこで暮らしていくための基本になるのは、どういう種類の放射性物質があって、それが身体にどう取り込まれるか、外からどういう放射線がうけるかということが、生活の基本になるわけです。」
「あの、まぁ、そういったことを前提にしてですね、木村さんのところには、この、そうとう、実際に調べて欲しいという依頼が、沢山来てたとうかがっていますけれども、」
「はい。」
「あの、いわき市からも、そういう要望があって、現地調査されてきたということなんですが、」
「そうです。計画的避難地(区)域や緊急時避難準備区域というふうに、含まれていない、いわき市、」
「この部分ですね。」
「はい、この部分です。で、しかも、30キロ・ゾーン、というようなところに、汚染地域を見つけてきたということで、これから報告を致します。」
「はい。その様子をVTRにまとめてあります。ご覧下さい。」


【福島】

[坂井忠平さん]

木村さんに調査を依頼した、坂井忠平(ちゅうへい)さんです。

「いろいろ、お世話になります。」
「よろしく、お願いします。ほんとに」
「どうぞ。」
「はい。どうも、すみません。」

坂井さんは、原発から28キロの地区に住んでいます。
ほんとうに、放射線の影響は無いのか、不安を感じていました。

木村さんは、岡野さんの測定器をのせた車で、いわき市全域を走ることにしました。

まずは、いわき市を南から北に、磐越自動車道を走ります。
放射能の値は、毎時1マイクロシーベルト未満という、比較的、低い値を計測しました。

「今、小野インターチェンジを出たところで、0.12…13。うん、まあ、そのくらいの線量ですね。それほど、うん、高いというほどではありません。」

次に、鉄道に沿って、住宅街を走ります。

「ん、ちょっと低いくらいですね、.09。」

ここも放射線量は高くありません。


[志田名地区]

さらに、山あいに、車を進めました。
坂井さんの住む、志田名(しだにお)地区です。
測定値は、急上昇し、毎時2マイクロシーベルトを超えました。
これまでの倍以上の高い数値です。

「え、やっぱり、3.1マイクロシーベルト、パーアワー」
「3ある?!」
「3.14。3.11とか、結構高いですよ。」

「今、これだけだと、飯舘と変わりませんからね。」

いわき市全体の『放射能汚染地図』です。
ほとんどの地域が、1マイクロシーベルト以下の、青色を示しています。
しかし、市の北部の山間部には、放射線量の高いホットスポットが点在していました。


[大越フクさん]

志田名地区で農業を営む、大越フクさんです。

「あ~」
「ははは、ばあちゃんのよ。」
「うん、ばあちゃんの、ばあちゃんの野菜畑~。」
(略)

大越さんは、ハウスの中で自家用の野菜を栽培しています。

「えぇ、このハウスの中でも、どうかなぁ~と思うんけんちょも、いいや、いいや~っと食べてんだぁ。ははは~。うん。」


「高いけども、空間線量として高いけども、う~ん。1.41。(略)」

ハウスの中の値は、外と、あまり変わりません。

「はははは。高いな。」
「高いね。」
「高いね。」
「うん。」
「うん。」
「だめか。はははは。」
「だめかも知れん。」
「うん。」
「まあ、」
「う~ん。」
「むふふふっ。(苦)」


[大越キヨコさん]

大越さんの娘のキヨコさんは、中国製の測定器を買い、毎日、自分で放射能を測っています。

「1.18ですね。」
「おいくらだったんですか?」
「これね、4万9千…5万くらいかな。
それこそ孫のために、えへっへっへっ(苦)」

(孫は広島に一時避難中)

「早く、ねえ、こっちの学校に戻ってきられるように、と思って買ったんですよ。うん…。」

いわき市が、緊急時避難準備区域から外れたのは、国が市の中心部で測った放射線量が低かったからです。
北部で、ホットスポットが見つかった事を、市はどう受けとめているのでしょうか。


[いわき市役所」
[いわき市副市長 伊東正晃さん]

「そこで、(国から)見せて頂いた数値の中では、いわき(市)は高いところでも、まあ、1代でって、2の地点はなく」
「うむ。」
「2.…2.0マイクロシーベルト以上のものは、そこには、無かったということでした。はい。
本当に、きめ細かいという意味では、出来ていなかったと思うんですよね。
あるいは、支所なりの単位の中で、まあ、移動しながら測っていただくという数値でしたので、必ずしも、ちゃんと、ピンポイントっていうんですか、ホットスポットと言われるところの、ピンポイントに当たってたのか、どうかっていうのは、あったかのかと思いますけど。」


今回、高い放射線の値が見つかった地域では、ほとんどの農家が、作付けを控えています。

「まあ、これ、あの、」
「はい。」
「先生に見てもらって、」
「はい。」
「た…、あの、耕してもね、」
「うん。うん。」
「耕しても、いいか悪いか出てくるんでしょうから」
「そうそうそう、そう。」
「みんな、それを待っているんですよ。これ、やらないで。」
「そうなんですよねぇ。」

今後、この地域で生活を続けていくことは可能なのか。
それを明らかにするため、木村さんは、地区の土壌も、細かく調査していく必要があると考えています。

「はい。サンプルひとつ、完了。」



【スタジオ】

「木村さん、この調査結果、どういうふうに受けとめればいいんでしょう。」
「はい。これはあくまでも、1点でしか、まだ、採っていないんですよね。現在、このデータが出ているのは。
で、それも、土壌から0から5センチの、表層に近いところでのデータを示しているんですが、この中では3点。
同じ地域で、同じポ…地点で、3点採っているんですがね。
この中で、セシウム成分というのを、こう、見てきました。
で、ヨウ素成分は、今、千分の1以下に減衰していますんで、セシウム成分だけをとってもみても、チェルノブイリの第2ゾーン、義務的避難区域というところに匹敵するようなレベルになっていると。」
「うむ。」
「ただし、これは、あくまでも1点ですので、これを、先ほどのように、点を拡げていく、点の数を増やしていくことによって、その拡がりを見ていくというのが、今後、調査を待っているということ。調査結果を待っているということです。」
「なるほど。か、かなり、もっと広範に、やっぱり調べていかなければならないということになる。」
「そうですね。あの、1点では、何も言えませんので、ええ、」
「うむ。」
「ええ、何点でも採って、きちんとした評価をしていかないと、いけないと思います。」
「岡野さん。今後、調べていく上でですね、最後になりますけども、岡野さん、今日、これご覧になりまして、一番大切な点というのは、どうところになりますか。」
「やっぱり、どういう種類の放射能物質があるかというを、明確に把握することで。」
「うむ。」
「それが、外部からくる放射線とか、それを通して、食べ物にどう入ってくるかということを、的確にとらえて、それの対応を考えるかということが、非常に大事だと思います。」
「これまで、過去の蓄積というのが、我々、経験きてます、きていますけど、それだけではなくて、やっぱり、新しい、その、教訓というものを生かしていく考え方が必要になっていくということですか。」
「そうですね。新しい教訓ばかりでもない、過去のそういう教訓を非常に参考にして、役立てなければいけないと思います。」
「はい。ありがとうございました。
え、ご覧頂きましたように、私達は、これまでに経験してない、新たな時代に足を踏み入れいるのかも知れません。
そんなことを、大変強く実感させられる報告になりました。」



取材協力 高辻俊宏 ナロージチ地区パザール村議会
語り 鹿島綾乃
撮影 濱田亮 上泉美雄
音声 緒方慎一郎 中川竜一
映像技術 白石好考
音響効果 日下英介
美術 宮崎有樹
編集 森光敏
取材 松丸慶太 等健太郎
ディレクター 七沢潔 渡辺考
制作統括 増田秀樹


ETV特集
続報 放射能汚染地図

制作・著作 NHK

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